キッシュに生ハム、サラミとパテ。毎日の食卓に絶対必須ではないけれど、あるとそれだけで特別感があって、自分へのご褒美になる。
そんなシャルキュトリー専門店「MAISON T」が、2023年6月神楽坂にオープンしました。
雑誌の東京カレンダーを彷彿とさせるオシャレな雰囲気に、ドキドキしてしまう方も多いはず。
さぞイケイケの個人オーナー店かと思いきや、なんと老舗問屋・鳥新の外食事業というから驚きです。
鳥新は明治28年創業、板橋に本社をかまえる鶏肉の卸会社。地域に根ざしながら、新宿伊勢丹のフランス展に出店したり、堅実に事業を拡大してきました。
「出店場所を決める時、最初に思い浮かんだのが神楽坂だった」
そう仰るのは、MAISON Tマネージャーの岡橋さん。歴史があり、流行りもキャッチする神楽坂で自社商品を広めたい――そのビジョンも既に近隣民に受け容れられている通り、大人の贅沢を楽しめるシャルキュトリー専門店となっています。
この記事では、MAISON Tへの行き方、店内の様子、メニュー、食べたもの、神楽坂における位置づけなどを執筆します。
MAISON Tへの行き方
MAISON Tの最寄駅は東京メトロ東西線・神楽坂。1aまたは1b出口から徒歩1分です。
MAISON Tがあるのは神楽坂の路地裏、赤城神社すぐそばというパワフルな場所。
コンクリート調のビルに黒いスケルトンの扉がなんともスタイリッシュ。
路面店という入りやすさもあり、サッと生ハムを買っていく地元らしき人もちらほら。
メニュー
ショーケースには生ハムやサンドイッチ、キッシュなどがズラリと並びます。
MAISON Tの商品はフランス産がメイン。
フランス製バターを使ったクロワッサンのサンドイッチは、伊勢丹の催事でも販売した実力品。
シャルキュトリ盛り合わせ、ホールキッシュは友人を招いての家飲みにぴったりですね。
キッシュ好きとしては、一人でホール食いできるのもロマンがあるなぁと思いました。
生ハムといえばイタリアですが、MAISON Tではフランス産。頑張った日のご褒美に、ソファーで寝ながら摘めば最高の一日になりそうです。
イートインでは、生ハムやサラミなど15種のシャルキュトリーを20g単位で楽しめます。
中でも注目したいのが、フランスのピエールオテイザから仕入れるサラミやパテ。
ピエールオテイザはフランス・バスク地方にある食品ブティックで、顔が黒くて身体はピンクのバスク豚を主力としています(参照:ピエールオテイザ/ENOTECAonline)。
後述しますが、このバスク豚が本当に美味しい!
年間2,000頭しか出荷できない、希少なバスク豚を頂けるチャンスです。
ちなみにオーナーのオテイザ氏は、フランスで最も権威ある「レジオン・ドヌール勲章」を受賞。おそらく日本の文化勲章とか長嶋茂雄さんにあたるスゴイ方でしょう。
サラミのメニューにはパリ農業博覧会で金賞、バイヨンヌの伝統製法などと書いてあり、どれも絶品であることは簡単に想像できます。
ですが、サラミマニアでない限りどれを選べばいいかきっと悩んでしまうでしょう。
そこでMAISON Tのウリであるピエールオテイザのサラミについて、それぞれ味の違いを調べてみました。注文の際はご参考に!
シャルキュトリーにはやっぱりワイン。この日はノンアルワインが品切れでしたが、通常はあるそうです。
グラスワインは800~900円で、神楽坂での相場価格だと思います。
ハーブティーやコーヒーもあるので、お酒を飲めない日でもオシャレに楽しめますよ。
店内の様子
お店の奥には、4人くらいまで入れそうなイートインスペースがあります。外からはほとんど見えないので、一人飲みでも安心です。
現在はスタンディングですが、今後イスも導入予定だそうです。
おしゃれなコンクリート壁に囲まれながら、カウンターは木目調で安心感があります。
カウンター下のフックにかばんを掛け、さて注文だと目をやると骨付き生ハム(原木)が!
カウンターの目の前で、生ハムがスライスされるライブ感に一人でもワクワクしちゃいます。
軽めにランチ!
日曜の昼過ぎ、小腹が空いたのでMAISON Tでランチをとりました。
この日頂いたのは、ジャンボンキュイのサンドイッチ(972円)、バスク豚のパテ(720円)、セイロンティー(500円)。
サンドイッチはバゲットもフランス産というから驚きです。現地から取り寄せたフランス小麦のバゲットは、ハードだけど良い感じにムギュッとした食感もあります。
ジャンボンキュイ(ロースハム)は唇でちぎれるほどしっとり柔らかく、ほんのり感じる脂からも甘み旨みを感じます。
ふわふわの削りチーズは口溶けなめらかで、ミルク感たっぷりのリッチな味わい。上品な旨味をもつジャンボンキュイとの相性は最高です。
そして一番衝撃を受けたのは、バスク豚(キントア)のパテ(50g720円)。
驚くほど強い旨味、やわらかい甘みがじんわり出てきて、ちょっとため息が出そうほど美味しい。
伊勢丹の催事で買った方が、その味を再び求めてMAISON Tまで来店したというエピソードにも納得です。
実際バスク豚は、ミシュラン星つき店が世界一集まる街・サンセバスチャンにおいて「幻の豚」とも称され(スペイン・サンセバスチャンのバスク豚/旨焼もぐり)、これを採用するミシュラン店も多いそう。
生ハムといえば、イタリアやスペイン産が定番かと思いますが、MAISON Tではフランス産。
「フランスの生ハムは、イタリアとスペインの良いとこどりだと思う」とマネージャーの岡橋さん。
私はフランス産の生ハムを頂くのは初めて(か、あっても無意識)だと思いますが、豚そのものの甘さと穏やかな塩味を感じられ、ワインなしでもパクパク食べられちゃう美味しさ!
今回は試食で頂きましたが、次はぜひ盛り合わせで食べたいと思います。
以上、MAISON Tのご紹介でした。
混雑具合
日曜の13:00頃に入店し、先客1名。私が飲食中にもイートインの来店がありました(が4名様でキャパシティ的に入れず)。
客層は30〜50代の地元の方が多いそうで、テイクアウトのお客さんがぽつぽつ来ていました。
神楽坂におけるポジション
「神楽坂はフレンチが多い」とよく言われるように、シャルキュトリーのお店も多数あります。
たとえば神楽坂のルコキヤージュ、フランス人シェフの惣菜店レグルモンディーズでは、パテやキッシュをすぐに持ち帰り可能です。
また神楽坂通りの生ハムCOMPANYでは、手軽にモバイルオーダーできるのがウリ。江戸川橋にはAbats.という自家製シャルキュトリー専門店もあります。
競合は数多ありますが、MAISON Tは老舗の精肉問屋が手掛けるという点はオンリーワンの要素。
また、フランス現地のミシュラン店が採用するシャルキュトリーを扱っていることから、初めて買う時の安心感は絶大です。
展望
上記に述べたように、神楽坂で美味しいシャルキュトリーを頂けるお店はたくさんあります。
激戦区において、お店が根づいていくにはどうすればよいでしょうか?
神楽坂をみていると、地域民に受け容れられないお店は閉店していくことが多いように感じます。
では地域民に愛され、かつ遠方からもお客が来るようなお店は何があるか。
ジャンルは違いますが、神楽坂においてはアトリエコータが挙げられると思います。
同店のカウンターデザートは最安1590円、ドリンク付なら2,000円超えと高級です。
一見すると観光客向けのように見えますが、なぜ地元民にも愛されるのか。
私はアトリエコータの強みとして、以下4点が挙げられると思います。
・価格の棲み分け(客単価2,000円のカウンターデザートは観光向け、600円台の持ち帰りケーキは地元民やギフト向け)
・デザート材料の明示(食べるイメージが湧く、納得感をもって意思決定できる)
・権威性(食べログ百名店、オーナーシェフの経歴)
・年に一度の10%引セール(ブランディングを保ちつつ、好感度もある)
この中で、「権威性」については鳥新(MAISON Tの運営会社)も十分あるのは間違いなさそうです。
120年も目利きを養った鶏肉問屋が手掛け、かつフランスのミシュラン店も採用するシャルキュトリーを提供しているなんて、文字だけでも美味しいことが分かりますよね。
この点をSNSでもアピールすれば、初めて買う方の間口を広げられるのではと思いました。
反対に、フランス高級食材を扱っていることから「価格の棲み分け」、客単価を落とすことは難しいと思います。
ターゲットはお金に余裕のある方と思いますが、一般市民たぬきとしては、あと15%ほど安ければもっと来れるのに...とワガママを考えてしまう。
さらに言うと、あ〜今日生ハム食べたい!と思う日は正直あまりなく、お腹が空いた時に買うのは結局お惣菜です(From一般市民たぬき)。
客層を広げるなら(価格の棲み分けをするなら)、たとえば板橋本社の1階で販売している鶏料理をシャルキュトリー風にアレンジし、曜日限定販売するとか。ターゲットは地元民。特にローストチキンはそのまま販売しても良さそうです。
しかし、フランス産シャルキュトリーの軸を守るなら、板橋のチキンのほうに人気が傾かないよう販売日や生産量のバランスは考える必要がありそうです。
以上、たぬきの勝手に意見陳述でした。
まとめ
MAISON Tでは、大人のうっとりとした贅沢を満喫できるシャルキュトリー専門店。
さすがは創業120年の鶏肉卸会社による運営で、美食街・神楽坂にぴったりのお店だと思います。
お値段は少々張りますが、ここぞという贅沢をしたい時、家に来てくれた友達を喜ばせたい時には絶対外さないでしょう。
たぬきは年齢アラサーなのに、大人として上り詰めたような贅沢を感じる美味しさでした。
MAISON Tには、ご紹介したバスク豚以外にも、さまざまな種類のシャルキュトリーがあります。
普段の生活では知ることのできない上質シャルキュトリーを頂けば、自分の中の食文化が広がって、グルメの知見も深まっちゃう。
そんな有意義で特別なお店が神楽坂にオープンしてくれました。
大人の濃い贅沢を満喫するなら、MAISON Tでシャルキュトリー。
がんばった週末の夜に、大切な友達を招いての家飲みに、MAISON Tのシャルキュトリーで花を咲かせましょう。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。